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カテゴリー "エッセイ" の記事

わたしの10年

好きではじめた仕事を辞めた年、写真への興味が薄れていった年、少しずつ色んなことを諦めた年、それが10年前でした。

お世話になった写真屋さんが廃業を決め、「これからどうしようかな」と途方に暮れていたときに出会ったのが戸越銀座商店街にあるフォトカノンさん。フジカラープラザからリニューアルして間もない頃、それも同じ10年前のことでした。

カメラを持ち歩くことすらしなくなった私が「展示をしてください」と声を掛けられたのも、同じ10年前。私にとって2008年はとても大きな転換期だったことを、10年後の今、また振り返っています。「いつ何が起こるかなんて、分からないもんだな」と。


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出会ってから今もずっとお世話になっているお店は、今年の10月10日でオープン10周年を迎えます。お店のドアを初めて開けてから10年…これからもよろしくお願いします。



公募写真展
フォトカノン戸越銀座店 10周年の10月10日展
2018年9月28日(金) - 10月10日(水)
10:00 - 20:00 木曜休
東京都品川区戸越2-1-3

写真展 公式ホームページ
https://photokanon101010.wixsite.com/main
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忘れないこと、忘れてはいけないこと。

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大雨の朝、
いつもと同じ時間に勤務先の最寄駅に到着する
と同時にスマホが受信した緊急ニュースに、
一瞬フリーズした。


1995年3月20日。私は高校3年生で、
卒業式のリハーサルのため登校していた。
三学期は受験でほとんど休んでいたので
久しぶりの登校だった。
終業のホームルームで担任の先生から、
みんな久しぶりに会えて嬉しいだろうけど
丸ノ内線と千代田線でサリンがまかれたらしいので
まっすぐ家に帰るように、と言われた。
世田谷の外れの学校に通っていた私にとって、
自宅のある目黒と学校までの狭い範囲が
世界の全てだったわけで、
丸ノ内線も千代田線もほとんど縁はなく、
親友とご飯を食べて帰ろうと、バスに乗った。
今ほど人のいない二子玉川駅の改札で初めて、
日比谷線にも被害があったことを知った。
父と姉が通勤に使っている路線だった。


父は毎朝7時には家を出るので大丈夫だ。
しかし姉の出勤時間は知らなかった。
SNSどころか携帯電話もない時代。
公衆電話から自宅に電話しても誰も出ない。
もしかしたら母は病院に行っているのではないか。
経験したことのない恐怖が全身を襲ったのを、
今でも覚えている。
親友はすぐに私の様子を悟り、
今日は帰ろう、と言ってくれた。
家に帰っても母はおらず、伝言もなく、
姉の名前がないかテレビをずっと見ていた。
幸いなことに姉は数時間遅れで会社に着き、
無事を確認した母は呑気に出かけていただけだった。


9.11よりも前に起きたこの事件が、
世界ではテロと言われるものであると知ったのは、
数年後に英国留学した時だ。


昨日の報道に違和感を覚えた。
「これで一定の終息」でいいのか、
日本人お得意の、
臭いものに蓋をしているだけでは無いのか。
そもそも、かの宗教団体に
あれだけの人がのめり込んだという事実、
それこそが日本社会の問題では無かったのか。


私は死ぬまで、
3月20日を迎えるたびに思い出すだろう。
身内が殺されたかも知れないと、
恐怖を覚えたあの日を。


うつろう

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「今年の春は早くやって来たね」とか
「あっという間に桜が咲いてしまったね」とか
そんなことを話す機会が多い今年、
そろそろ一年の半分が終わります。

「これを撮るぞ」と意気込むことがさほどなく
「ここへ行きたい」と切に願うこともないので
レンズを向けるのは専ら日々の何かしら。
生活の気になる風景を気が向いたときに撮っています。

特別なものや非日常への関心が薄くても
季節が移ろえば写真に写るものにも自然と変化が現れます。
写真はそれを目に見えるかたちで教えてくれますね。

少ない枚数でも、それらを見返していくうちに
自分の視点の偏りが分かってくるのもまた
写真の楽しみ方の一つだ、と考えるようになりました。


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東京は、梅雨に入ったあたりから
本来の季節の落ち着きを少しずつ取り戻しているように思います。
雨が降り、太陽が時折顔を出し、また雨が降る。
その繰り返しの先に待っているのはじりじりと暑い日々。

一年の残り半分、私はどんな風景を撮るのでしょうか。
今年も日本に夏がやってきます。心してかかりますかね。

地球へもどっていく私

「草」をテーマに初めて制作、展示をしてから五年が経ち、
今年東京で二度目の草の写真展を開催することになりました。

自分がどんなものを好きで撮っているのかよく分かっていなかったとき、
気に入っている写真を選んで、並べて、選んで、並べて…を繰り返し
最後に残ったのは植物が写っているものばかりで。
そのなかでも群を抜いて多かったのが、草の写真でした。

今でも外に出ると、目線は自然と下を向いています。
地面にウエストレベルのカメラを直接置き、ひざまずいてファインダを覗く姿に、
「草になろうとしている」とか「土になろうとしている」とか
「地球へ戻ろうとしている」とか言われます。
なんだか妙に褒められているような気持ちになってしまいます。笑

今回の個展では、五年間で撮影したもののなかから選んでいます。
これまで何度もお見せしたことのあるものも、一度も公にしてこなかったものも
共に楽しんでいただけるような構成の展示にしています。

作品を見終えた後、思わず下を向いてしまいたくなるような
そんな風に楽しんでもらえるような機会になれば嬉しいです。



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八木香保里 写真展 「草のね」
2018年5月3日(木) - 5月27日(日)

うつわと、暮らしの道具 パルケ
東京都品川区小山6-21-20
http://parque-tokyo.com/

魔物のような時間に



朝起きてから私は、いつもある時間の中を彷徨う。
生きるために活動するのとは少し異質な時間、堰き止められてぐるぐる滞留しているような、魔物のような時間の中を。
それは、人びとが動き出す前にあり、1日の活動が本格的に始まる前にあり、現実の生活に自分を放り込むため自分をリセットする時間でもある。

その中で朝をまとった光景を見、照らす光を意識する時、私は、やはり昨日が過ぎて今日は来たのだと確信し日常の扉を開けに行く。